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(続)鼻咽腔炎(上咽頭炎)

 

新年を迎え、2010年代の新しい幕開けとなりました。IgA腎症根治治療ネットワーク開設から早いもので一年がたちました。現在、扁摘パルスをお受けになった患者さんにアンケート調査を実施中ですが昨年末で約160件の回答が寄せられました。ご協力に感謝しています。200例になった時点で第二回目の中間報告を行います。患者さんひとり一人の経験がこれから治療を受ける患者さんや、現在治療中の患者さんに生かされるような形で情報発信を行いたいと考えています。引き続きのご協力をお願いします。

 

扁摘パルスはIgA腎症の糸球体血管炎を消滅する治療なので血尿を消すことのできる治療です。

しかし、治療開始の時期が遅いと、糸球体血管炎がなくなった後も傷んだ糸球体から蛋白粒子が尿中に漏れ出るために蛋白尿は残ってしまいます。つまり、扁摘パルスをして血尿は陰性化したが蛋白尿が残った場合は治療開始の時期が遅すぎたのだから残念ではあるけれど仕方がないと見なされます。

 

問題は扁摘パルス後も血尿が残る場合です。パルス後すぐに血尿が消えることもありますが、多くは1、2年の経過で徐々に陰性化します(血尿が残っていても最長1年間でステロイドは中止します)。

当ネットワークのアンケート調査でも扁摘パルスをしたが血尿が消えなかったという回答をいただくことがあります。当然のことながらそのような場合は治療に対する患者さんの満足度は低いものになります。

また、私は仙台、東京、愛知でIgA腎症専門外来を行っていますが、扁摘パルスを受けたけれど血尿と

蛋白尿が陰性にならないということでセカンド・オピニオンを希望され受診される患者さんは少なくありません。この中の多くの患者さんは既に腎臓内科の主治医から耳鼻咽喉科を紹介され、特に異常はないとの説明を受けています。


このような患者さんを前にして私が最初に行うのは0.5%塩化亜鉛の上咽頭塗布による上咽頭炎(鼻咽腔炎)の診断的治療です。私の経験ではこのような患者さんの8割程度に強めの上咽頭炎があります。

しかし、上咽頭炎が存在すればそれが血尿の消えない原因であると決めつけることはできません。

20世紀初頭に盛隆を極めた「病巣感染」という概念が、その後医学界に定着しなかった原因はこの曖昧さにあります。つまり、慢性上咽頭炎があってもIgA腎症が寛解する人もいれば、慢性上咽頭炎がなくても寛解しない人もいて、原因と結果の関係がサイエンスとして美しくないのです。しかし、理屈はともかく、患者さんは寛解を望んでいるわけですから、上咽頭炎があれば慢性の上咽頭炎がIgA腎症の糸球体血管炎の難治を招いている可能性があると想定して、まずは上咽頭炎の治療を行います。


前回のコラムにも書きましたがここで大きな障害があります。上咽頭炎の治療に精通した耳鼻咽喉科医が全国にも数えるほどしかいないのです。理由は二つあります。ひとつは数十年前に鼻咽腔炎治療が脚光を浴びかけた時期がありましたが塩化亜鉛塗布の治療が痛いので患者さんに評判が一般的にはあまりよろしくなく、医師が敬遠してしまったこと。もうひとつはこの治療の保険点数が大変低く設定されていて病院経営のうえで魅力がないことです。小泉内閣以来の医療費抑制政策の影響で今日では国内のほとんどの病院・医院が経営に苦労をしている状態です。病院・医院が潰れてしまうのでは良い医療もできません。20年くらい前は患者さんのためになればそれで良いという風潮で医療が行われていましたが(扁摘パルスもそのような時代に生まれました)、ソロバン勘定抜きに医療は成り立たないのが現状です。

東京の湯島の渡辺晋先生はたくさんの患者さんに鼻咽腔炎の塩化亜鉛塗布治療を精力的に行っておられます。渡辺先生のもとへ通院中の患者さんのお話では一回の診療で支払う医療費がタクシーの初乗り運賃より安いとのことです。今日、このような殊勝な医師は例外的な存在です。


慢性上咽頭炎の治療は耳鼻咽喉科医が行うのが最善ですが、疾患概念そのものが普及していない今日においてそれは容易なことではありません。また、塩化亜鉛塗布治療に精通した耳鼻咽喉科医に運よく出会えたとしても毎週の通院治療を続けるのは容易ではありません。
そこで次の手段として登場するのが鼻孔から行う上咽頭(鼻咽腔)の洗浄です。水道水や生理的食塩水でもホコリなどを洗い流す作用は期待できますが、微酸性電解水を用いると除菌効果も期待できます。また、青梅搾汁濃縮液は抗炎症作用もあるので上咽頭の慢性炎症を抑える可能性もあります。

生体に無害であることが大前提であることは言うまでもありませんが世の中の鼻咽腔炎への関心がもっと高まれば、他にも優れた慢性上咽頭炎の治療法が登場すると思います。そのためにも上咽頭の謎に関心を持つ研究者が増え、新しい画期的な発見が生まれることを願います。

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堀田 修

堀田修

堀田 修クリニック 院長

元仙台社会保険病院腎センター長(〜2008年12月31日)

1988年IgA腎症の根治治療として扁摘パルス療法を考案。

2001年、2002年扁摘パルスにより、早期の段階に治療介入を行えばIgA腎症が治りうる疾患であることを米国医学雑誌(AJKD)に報告。

その後は同治療の普及活動と臨床データの集積を続ける。

堀田 修のIgA腎症専門外来

堀田 修クリニック (宮城県仙台市)
外来日:外来日:月〜土(予約制) 予約電話受付時間 月、火、水、金:14時〜17時半、木、土:9時〜12時 (022-390-6033)
  http://www.hoc.ne.jp/

成田記念病院(愛知県豊橋市)
月に1回 金曜日(予約制)
  http://www.meiyokai.or.jp/narita/news.php?id=25

代表著書

慢性免疫病の根本治療に挑む(悠飛社)

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(悠飛社)

IgA腎症の病態と扁摘パルス療法

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ターナショナル
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Recent Advances in IgA Nephropathy

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( World Scientific 出版社 )



本ホームページの内容は仙台社会保険病院腎センターで蓄積されたものが大半を占めますが、本ネットワークの目的は特定の団体、個人のPRではなく扁摘パルスに関する非営利目的の情報発信です。私(堀田 修)が個人で賛同者を募り、ネットワーク運営を行っています。


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